「ゲノム編集による子どもの誕生についての共同声明」記者会見

人文系三学会(日本哲学会理事会 日本倫理学会評議員会 日本宗教学会理事会)
「ゲノム編集による子どもの誕生についての共同声明」記者会見

日時 2018年12月25日(火)13:00-14:00(12:30から受付開始)
場所 衆議院第1議員会館第6会議室


 従来の遺伝子組み換え技術より圧倒的に高い効率で遺伝子を改変することを可能にしたゲノム編集技術は、とりわけその第三世代クリスパー・キャス9の登場以来、急速な進展を遂げ、さまざまな分野で大きな期待が寄せられている。そのなかで、ゲノム編集を用いたヒト生殖細胞系への介入はもっとも大きな危惧を引き起こす領域であるが、2018年11中国の研究者がゲノム編集技術を使ってヒトの受精卵の遺伝子を改変し、双子が生まれたと主張している問題は、誕生の真偽は不明ながらも倫理面や安全面から批判を呼んでいる。
 ゲノム編集技術の安全性が確保できたとしても、人間そのものの改変に私たちが踏み出してよいということにはならないはずである。生殖細胞系列(配偶子や受精卵)にゲノム編集を行うことは当初は医療として正当化され、不妊治療の改善とか難病の治療という目的が掲げられるであろう。だが、たとえば乳がんなどの病気になりやすい傾向を減らすために受精卵にゲノム編集を行うことが是認されたら、それはヒトの種の改変につながるだろう。より高い身体能力、知的能力を得るための医療の是認にもつながるだろう。しかし、病気の治療と心身の改善を望むことの間に線を引くことができるだろうか。生殖細胞系列へのゲノム編集を禁ずることは有力な選択肢であるが、人類社会はそのような決定を行う力をもっているだろうか。われわれはこれについて、国民的な議論を始めるべき地点に来ている。そこで、人文系三学会は中国の報道を受けて、共同声明を発表することとした。

日本哲学会会長 一橋大学大学院社会学研究科教授 加藤泰史
日本宗教学会理事 上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授 島薗進
日本倫理学会評議員 立正大学文学部哲学科教授 田坂さつき

 お問い合わせ先 stasaka@ris.ac.jp 田坂さつき
  *お越しいただける方は、事前にご連絡をいただければ幸いです。

人文系三学会緊急共同声明に至る経緯
 
これまで、中国での「ゲノム編集の子誕生」に関わり、以下の機関から声明が出ています。

1)日本ゲノム編集学会
2)日本医学会・日本医師会
3)日本遺伝子細胞治療学会・日本人類遺伝学会・日本産科婦人科学会・日本生殖医学会
4)日本学術会議幹事会
5)日本生命倫理学会

日本哲学会、倫理学会、宗教学会ではこうした際の声明はあまり前例がないかと思います。にもかかわらず、この時点で声明を出すことが重要であると考えた理由をあげてみます。

1)ここで人文・社会科学系、とりわけ哲学委員会系の学術団体から声明を出しておくことはひじょうに大きな意義があると思います。今後の日本の学術界で「倫理」の側面が重視されていくためにも、ぜひ声明を形にしておきたいと考えました。

2)ゲノム編集技術が新優生学やポストヒューマンといった事態につながりうること、またこうした科学技術の発展について「シビリアンコントロール」が必要であり哲学委員会系にそうした役割があることについて、これまで日本学術会議等でも発言してきております。
『日本の展望2010』 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-tsoukai.pdf 
「哲学分野の展望」 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h-1-2.pdf
香川知晶他『〈いのち〉はいかに語りうるか?――生命科学・生命倫理における人文知の意義』公益財団法人日本学術協力財団、2018年

3)このような機会は滅多にありません。1997年クローン羊の誕生が報告されたときにも大きな声が上がりましたが、今回はそれ以上の意義があります。これは国際社会が動くための大きな転機の可能性をもった機会であり、学会としての発言がもとめられる珍しい機会かと思います。今回緊急声明を出すに当たって、今年度の学会大会は三学会とも終了してしまい、総会での合意が取れなかったので、理事会・評議員会声明となりました。

日本哲学会会長 一橋大学大学院社会学研究科教授 加藤泰史
日本宗教学会理事 上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授 島薗進
日本倫理学会評議員 立正大学文学部哲学科教授 田坂さつき

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